- 自分に対して厳しい
- 失敗を受け入れられない
- 自分を責めてしまいがち
そんな悩みを感じたことはありませんか?
特に、完璧主義、自己否定が強いなどの特徴を持つ方には多い思考かと思います。
今回はそのセルフコンパッションについて、公認心理師である筆者が解説しますので、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

公認心理師:田原直裕
理学療法士として、施設、病院、区役所に従事したのち、各機関で学んだ医療・心理学・コミュニケーションの現場体験と知識を活かし、公認心理師の資格を取得。性格やメンタル、人間関係に悩みを抱える知人が多かったことから、現在は恋愛サポートや公認心理師としての活動も行なっている。
【保有資格】 理学療法士、公認心理師
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セルフコンパッションとは?

セルフコンパッションとは、self (=自己・自分自身) とcompassion (=思いやり・慈しみ) を組み合わせた言葉で、直訳すると「自分への思いやり」となります。
しかし、心理学分野においてセルフコンパッションは『つらいときに自分をいたわる力』と定義されています。
また、セルフコンパッション研究の第一人者であるKristin Neffはその中身を
- 「自分へのやさしさ」
- 「自分だけではないという感覚」
- 「今の苦しさに気づくこと」
の3つで整理しています。
例えば、仕事で自分がミスをしてしまったときは
チルティどうして自分はこんなにダメなんだろう……
と、自分を責めてしまうこともあると思います。
しかし、同僚や後輩がミスをして落ち込んでいる時には、



ミスをしてしまってつらいよね。誰にでもあるから大丈夫。また同じことをしないように対策を考えよう。
といったように、相手の気持ちに寄り添いながら励まして、前向きな言葉をかけると思います。
そして、つらい気持ちを否定したり無理に前向きになろうとしたりするのではなく、
「今はつらいんだな」と受け止め、そのうえで自分にとって役立つ行動を選んでいく姿勢が大切になります。
自分に厳しい方ほど、
- 「もっと頑張らないといけない」
- 「自分には甘くしてはいけない」
と考えやすい傾向があります。
しかし、自分を責め続けることが、必ずしも成長や改善につながるとは限りません。
だからこそ、セルフコンパッションは、自分を甘やかすための考え方ではなく、苦しい状況でも自分を支え、前向きに行動していくための力として、近年さまざまな研究でも注目されています。
セルフコンパッションにはどんな効果があるの?


セルフコンパッションは、「自分にやさしくすること」が目的ではありません。
近年では、セルフコンパッションに関する研究も数多く行われており、心の健康やストレス対処に役立つことが報告されています。
ここでは、代表的な効果について紹介します。
①前向きな思考になれる
2023年に報告されたメタ分析では、セルフコンパッションを高める介入によって、抑うつ・不安・ストレスを小〜中程度改善する効果が示されました。
特に直後の効果は、抑うつとストレスで中程度、不安で小程度の改善が報告されています。
この結果だけを見ると、「セルフコンパッションを身につければ落ち込まなくなる」と感じる方もいるかもしれません。しかし、実際にはそうではありません。
失敗した直後は誰でも気持ちが沈んでしまうものです。
しかし、そのたびに自分を責め続けてしまうと、次の行動を起こすことが難しくなってしまいます。
一方で、自分の気持ちを受け止めながら冷静に状況を整理できるようになると、「次はどうすればいいだろう」と考えやすくなります。
その結果、落ち込みから回復しやすくなり、前向きに行動できるようになると考えられます。
②目標が達成しやすくなる
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「自分を厳しく責めたほうが成長できる」と考えている方も少なくないかと思います。
しかし、強すぎる自己批判は、やる気を高めるどころか、
「どうせ自分には無理だ」と諦めてしまったり、失敗を恐れて行動できなくなってしまったりすることがあります。



失敗はしたけれど、次はどう改善すればいいだろう?
このように考えられるようになることで、謝罪や修正、再挑戦など、次の行動につながりやすくなると考えられます。
目標に向かって努力を続けていれば、失敗することもあると思います。
③ストレスの軽減につながる
自分を責める気持ちが強いと、それだけでも大きなストレスになってしまいます。
さらに、「どうしてあんなことをしてしまったのだろう」と繰り返し考え続ける反すう思考が加わると、
自分自身を何度も責め続けることになり、苦しさが長引いてしまうことも少なくありません。
このように、感情に振り回されるのではなく、現実的に対処できるようになることで、ストレスの軽減にもつながると考えられます。
また、ストレスの原因そのものを変えられない場合でも、物事の受け止め方や向き合い方が変わることで、以前より気持ちが楽になることも少なくありません。
リスクや注意点はある?
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セルフコンパッションについて、よくある誤解と扱いの注意点を紹介します。
①「自分にやさしくすること」と「甘やかすこと」は違う
セルフコンパッションについて、「自分に甘くなること」とイメージされる方もいるかもしれません。
例えば、
「今日は疲れたから休もう」と考えることは、自分をいたわるために必要な場合もあります。
しかし、その一方で、本来やるべきことから逃げるための理由になってしまっている場合には、少し立ち止まって考えてみることも大切です。
セルフコンパッションは、「苦しいから何もしなくていい」と考えることではありません。
つらい気持ちを受け止めながらも、「今の自分にできることは何だろう」と考え、必要な責任を果たしていく姿勢も大切になります。



自分をいたわることと、自分に言い訳をすることは別のものだと理解しておくことが重要だね!
② 気分を良くすることだけが目的ではない
セルフコンパッションは、無理に前向きになろうとする方法ではありません。
本来は、
- 「今はつらい」
- 「誰にでもこういうことはある」
- 「今の自分にできることをやってみよう」
という流れで、自分の気持ちを受け止めながら、現実的な行動につなげていく考え方です。
苦しい気持ちを見て見ぬふりしたり、やるべきことから逃げ続けたりしてしまうと、一時的には気持ちが楽になったように感じても、結果的に問題が大きくなってしまうこともあります。
だからこそ、セルフコンパッションでは、自分の気持ちを受け止めたうえで、自分にとって役立つ行動を選ぶことが大切だと考えられます。
③心の不調が強いときは、セルフコンパッションだけで何とかしようとしない
セルフコンパッションには、抑うつや不安、ストレスの軽減などが期待できることが、多くの研究で報告されています。
特に、抑うつ症状や強い不安、トラウマ反応などによって日常生活に大きな支障が出ている場合には、医療機関やカウンセリングなどの専門的な支援を受けることも大切です。
また、セルフコンパッションに関する研究は年々増えていますが、比較的新しい研究分野でもあるため、今後さらに効果や活用方法について検証が進められていくと考えられます。
セルフコンパッションの鍛え方


セルフコンパッションは、生まれ持った性格や考え方によって決まるものではありません。
日々の意識や練習によって、少しずつ身につけていくことができる力です。
この章ではセルフコンパッションの要素と鍛え方の手順について解説していきます。
セルフコンパッションの3要素
セルフコンパッションの3要素は
- 「自分へのやさしさ」
- 「共通の人間性」
- 「マインドフルネス」
といわれています。
これらを、簡単に言い換えると次のようになります。
- 「自分へのやさしさ」→「責める代わりに、いたわる」
- 「共通の人間性」→「苦しんでいるのは自分だけじゃない」
- 「マインドフルネス」→「今つらいと気づく。でも、そのつらさに飲み込まれすぎない」
この3つがそろうと、感情に振り回されにくくなり、落ち着いて行動しやすくなります。
ここからは上述した3要素を根底に、段階的にセルフコンパッションを鍛えていく手順を解説します。
「気づく」練習をする
セルフコンパッションの取り掛かりは、まず、自分が自分を責めている瞬間に気づくことです。
たとえば失敗した直後に、心の中で
- 「最悪だ」
- 「またやった」
- 「自分はダメだ」
といった考えが生じたら、その場で一度立ち止まって、



「今、自分をかなり強く責めているな」
と、自分の考えにラベルを貼ります。
これはマインドフルネスの部分で、感情に巻き込まれすぎず、まず状態を把握する練習です。
責任感が強い方や、人に頼ることを苦手と感じている方、完璧主義傾向がある方は、自分を責めてしまう考えに気づきにくい傾向があります。
なかなか自分で気づくことが難しい場合には、周りの人の意見を聞いてみることも一つの方法かもしれません。
“親しい人なら何と言うか”を考えて自分に向ける
恐らく、
- 「しんどかったね」
- 「失敗はあるよ」
- 「まず一回落ち着こう」
- 「次を一緒に考えよう」
のような言葉が出るはずです。
その言葉を、少し違和感があっても自分自身にそのまま使う練習をしてみましょう。
「共通の人間性」を一言入れる
セルフコンパッションの鍛え始めに特に効きやすいのが、この一言です。
- 「こういうことは、人間なら誰にでもある」
- 「失敗して苦しいのは、自分だけじゃない」
これらの一言が入るだけで、「自分だけがおかしい」という孤立感が少しゆるみます。
「助けになる行動」を1つだけ選ぶ
ここがとても大事です。
セルフコンパッションは、やさしい言葉で終わりではありません。
たとえば、
- 仕事のミスなら「関係者に連絡する」
- 疲れすぎなら「10分休む」
- 落ち込みが強いなら「外に3分出る」
- 不安が強いなら「深呼吸を5回する」
という感じです。
心が批判的・きつくなっていると気づいたら、害になることではなく、助けになることをすることが重要で、とても実践的なポイントです。
1日1回、短いセルフトークを固定する
毎回考えるのが大変なら、定型文を作るのがおすすめです。
例えば次の3行です。
- 「今つらい」
- 「つらいのは人間として自然」
- 「今の自分にできる次に進むための行動を1つ選ぼう」
この3行は、セルフコンパッションの3要素をそのまま日常的に使える形にした表現です。
朝でも夜でも、落ち込んだときでも使えます。
これらの定型文を繰り返すことで、自己批判で終わっていた思考が、少しずつ現実的かつ、前向きな思考に変わっていきます。
いきなり“高い自己肯定”を目指さない
セルフコンパッションは、自己肯定感を無理に上げることではなく、苦しいときの自分への態度を少し軽減させることです。
極端に「自分を大好きになろう」とすると、かえって苦しくなってしまう可能性もあります。
そのため、最初は、「自分は素晴らしい」などとまで考えられるようになる必要はありません。
まとめ|日常に取り入れて、しなやかに生きる力を身につけよう


セルフコンパッションとは、『つらいときに自分をいたわる力』のことです。
しかし、「自分をいたわる」といっても、自分を甘やかすための考え方ではありません。
特に、完璧主義の傾向が強い方や、自分に厳しくなりやすい方は、常に自分を責め続け、大きな負担となり、結果的に本来発揮できる力を失ってしまうことにもつながります。



だからこそ、時には自分自身に対して、周囲の大切な人に向けるような思いやりを向けてあげることが大切だよ。
とはいえ、長年続けてきた考え方や自分との向き合い方を、すぐに変えることは簡単ではないので、「自分にやさしくする」ということ自体に違和感を覚えることもあるかと思います。
また、自分自身を責めすぎてしまっている状態に、自分一人では気づきにくいこともあります。
自分自身を客観的に見ることは簡単ではありませんが、他者の視点を取り入れることで、「自分が思っていたよりも厳しく自分を評価していた」と気づくこともあります。



セルフコンパッションを身につけることは、自分を変えることではなく、自分との関わり方を少しずつ変えていくこと!
そのような力を身につけることが、より穏やかに、そして自分らしく生きていくための助けになるのではないでしょうか。
【参考文献】
・Areum Han. et al., Effects of Self‑Compassion Interventions on Reducing Depressive Symptoms, Anxiety, and Stress: A Meta‑Analysis. Mindfulness(NY), Jun 5:1–29, 2023
・KRISTIN NEFF. Self-Compassion: An Alternative Conceptualization of a HealthyAttitudeToward Oneself. Self and Identity, 2: 85–101, 2003
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記事執筆者


公認心理師:田原直裕
理学療法士として、施設、病院、区役所に従事したのち、各機関で学んだ医療・心理学・コミュニケーションの現場体験と知識を活かし、公認心理師の資格を取得。性格やメンタル、人間関係に悩みを抱える知人が多かったことから、現在は恋愛サポートや公認心理師としての活動も行なっている。
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